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運命の書 第十一章

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http://www.playonline.com/eq2/tod/tod_c11.html より

大破砕編集

若い2人の男女は暗がりに身を潜ませ、巡回のガードをやり過ごした。「よし、いったね。もう安全だ、行こうティエラ」 「ガードなんて、どうとでもなるわよ」 ダークエルフの娘はつっけんどんな口調で言った。「あたしのお父様のほうがよほど怖いわよ。ヒューマンの男が高貴なテイル・ダルの乙女に指を触れたなんて知られてごらんなさい、その日のうちに男の首は胴体と生き別れだわ」

「なるほどねえ」 青年は物騒な話を聞かされても顔色ひとつ変えず、娘の肩に手をかけて自分の側に引き寄せた。「じゃあ、僕が君に結婚を申し込むつもりだとお父上が知ったら、それはもう怒り心頭ってやつかな?」

彼女はあわてたように青年を突き放した。「もう。なんて図々しいヒューマンかしら! 由緒あるヴドレス家の娘が、そんな申し込みを受けると本気で思って?」

「試してみよう」 そう言うと青年は彼女を抱きしめ、優しくキスをした。ティエラは目を閉じ、それに応えた。青年の顔が離れると、はじめて彼女は顔を赤らめて微笑んだ。「……そうね。でも、お父様のことは冗談でもなんでもないから。本当に気をつけて」

「ああ、わかってるよ。君のお父さんがこの場にいなくてホッとしてる」 青年は冗談めかしてそう言うと、ティエラを促した。「さあ、あまりグズグズしてるとガードが戻ってきちまう。船着場へ急ごう」

青年がティエラの手をとり、2人は桟橋まで走った。桟橋の先に小舟がロープでつながれていた。2人はそれに乗り込むと、ロープの結び目をほどいた。そして港へ向かってゆっくりと小舟を漕ぎ出した。

「素敵な夜だわ」 空を仰いでティエラはうっとりとつぶやいた。「新月の夜空の深い闇。なんて綺麗なのかしら。そう思わない?」

「綺麗だけど、それほどでもないよ。この世で一番綺麗な、君の肌の闇色に比べたらね」 青年はそう言って彼女に笑顔を向けた。ティエラの瞳が熱っぽさを帯びてそれを受け止めた。2人は小舟を漕いで湾をぐるりと回っていった。フリーポート港に停泊する大型の船のあいだをくぐり抜けるようにして進んでいく。灯台の明かりを避けて小舟は湾を抜け、やがて人気のない浜辺へと近づいていった。青年――サーヴェンはそこで漕ぐのを止め、オールを脇に置いた。ゆるやかな波に揺られる小舟の上で、ティエラは彼の胸に背をもたせかけた。そのまま2人は静かに、暗い海を見つめていた。

「……海がこんなに凪いだのはいつ以来かしら。きっと何か良いことが起きる兆しだわ」 ティエラはささやいた。

「そうだね。もしかしたら、僕らに駆け落ちをしろって勧める合図かもよ?」

「いったいどこへ駆け落ちしろっていうの? ヒューマンとダークエルフの男女が祝福される土地なんてあるわけないわ。コモンランドはいまじゃオークたちの領土よ。ネクチュロスへ行ったら、今度は頭の固いゼックシアンたちにあなたが殺されちゃう。ケイノスじゃ、あなたはともかくテイル・ダルの娘は歓迎されないわよね。かといって他の大陸まで海を渡るのはまだ危険だし。あと考えられるとしたら――」 そこで彼女の言葉はふと途切れた。夜空が不意に奇妙な輝きに照らされたのだ。

「何が起きてるんだ?」 サーヴェンも異変に気づき、眉をしかめた。天を仰いだままティエラは言った。「わからないわ、だけど空に何か途方もなく大きな歪みができてる」 ちかちかと瞬く光はやがてひとつに合わさりはじめた。そしていまや夜空にはうっすらとした光の輪に縁取られた丸い月の形が浮かび上がっていた。

「ねえ! あれって、ラクリンの月じゃないかしら?」 ティエラが興奮した声をあげた。

「ラクリンのことなら子どもの頃にちょっと本で読んだことがあるよ。ラクリンと行き来する手段はもう何百年も前に失われてしまったって。だけど、あの月は特殊なベールのようなものに遮られて地上からは見えないはずだ。もしあれがラクリンだとしたら、何だって突然見えるようになったんだ?」 サーヴェンが喋っているあいだにも、夜空に生じた2つめの月はその明るさを増していった。エネルギーがほとばしり、何条もの光の筋となって月の表面を駆け巡る。月全体が内部に満ちた力を押さえかね、身震いしているかのようだった。

「いったい何が起ころうとしてるの……?」 魅入られたようにティエラは月を見つめていた。そのとき、サーヴェンが大声で叫んだ。「目を閉じるんだ、ティエラ!」

しかしうっとりと月を見上げるティエラは恋人の言葉に従わなかった。「どうして? こんなに綺麗な光景、見たことないわ」

「だめだ。目を閉じて!」 その 叫び声が引き金になったかのように、夜空が閃光につつまれた。一瞬、空が真昼のように明るく輝く。爆発的な光量にサーヴェンは目を細め、腕で眼前を覆った。光はすぐに弱まっていき、夜空に星が戻ってくる。サーヴェンは天を仰いだ。ラクリンの月が、夜空に砕け散っていた。衝撃波の濁流に押し流され、月の破片が尾を引いて落ちてくる。それらの巨大な破片は急速にノーラスに引き寄せられていた。

危機が間近に迫っていることをサーヴェンは悟った。「まずいぞ。急いだほうがいい! ラクリンが地上からどのくらいの距離にあるのか知らないけど、もうじきあの破片が降り注いでくるぞ」

「待って。サーヴェン」 彼女の瞳はまっすぐに虚空を見ていた。

「どうした?」 「目が、見えないの」


「さて、これまでにわかっていることは?」 その問いに、情報屋は肩をすくめてみせた。「ほとんど何も。時間が時間だ、フリーポートの連中はみんなベッドの中で、爆発の瞬間を見てない。もちろん、あの異常な明るさに驚いてみんな起き出してきましたが」

「あの爆発した月がラクリンだったという確証はあるのかね?」

「そうですな、ずっと大昔にプレイン・オブ・スカイへ昇ったことがあるって奴がいうには、そこで目にしたラクリンの月によく似てたとか。だけど、確証っていわれるとね。プレインで目にする物事なんて、何が真実で何が幻影なのかわかりゃしない。まあ、あれがラクリンだったとしたら、みんなが思ってたよりラクリンはノーラスから近い距離に浮かんでたってことですな」

「原因については?」

「噂以上のものはありやせんぜ。そもそもラクリンとの行き来が絶えたのが昔のことだ。もうみんなラクリンのことなんて忘れちまってたじゃないですか。まあ、プリーストたちの中には、今度のことが、神々の帰還の予兆だなんていう奴もいますよ。あるいは大昔にラクリンが外敵の侵略を受けたことがあって、それが今回の爆発につながったなんて説もある。オーガたちはノームの馬鹿な発明が原因だと信じてるし、ヒューマンはラトンガを疑ってる。覇王様が部下に調査を命じられたそうだけど、現時点じゃ確かな情報はないに等しいですよ」

「この一件での犠牲者はどのくらいになる?」

「犠牲者の数なんて多すぎてわかりやせんぜ。一番大きな破片が最初に落ちてきて、巨大なクレーターができた。そしてノーラスは焦土と化しちまった。アーケイン・サイエンスの博士たちは今後何年、いや、何十年も破片が降り注ぐ可能性があるなんて言ってますがね。実のところは、やつらにもわからないので」 それを聞くと、年長のテイル・ダルはさらに苦々しい表情になった。「答えが必要だ。あの男をここへ」 2人のガードが扉の外へと消える。しばらくすると、2人に引きずられるように、1人の男が連れてこられた。容赦なく殴打された痕が見える。1人で歩くこともできないほどだ。男はテイル・ダルの主人の前に引き出された。「ヒューマンよ、答えろ。あの夜、何を見たのだ」

「さっき、言った……とおりです……」 途切れ途切れに男は言った。ダークエルフは男に何発も平手打ちをあびせた。「こやつめ、娘をだまくらかしおって! そのうえ私に嘘をつくとは。このヴドレスにそのような態度を示して、命が助かったものはないのだぞ」 テイル・ダルはさらに男の顔を打ちつけた。

「私たちは……ボートに乗っていました。そこで閃光を見たのです。彼女に見てはいけないと言いました。彼女に危害を加えようなんて、私が思うわけがありません」

「まだ嘘をいうか!」 ヴドレスは怒鳴り、再びサーヴェンを殴打した。「お前は身代金目当てにティエラを誘拐し、顔を見られないように娘の視力を奪った。そうであろう! 早く本当のことを言わぬか! 何を見た!?」 ティエラの父はまたも拳を固めてサーヴェンに迫った。

「もうやめて、お父様」 叫び声があがった。扉の前にティエラが立っていた。「あたしの愛している人なのよ」 ヴドレスは耐えられないというように怒りに身を震わせた。「何を馬鹿なことを言っておる。こやつは汚らわしいヒューマンだぞ。お前はこいつの呪文に操られているだけなのだ。ヒューマンなんぞを愛してしまうなど、それ以外考えられん!」

ティエラは扉にすがっていた手を離すと、よろめきながら部屋の中へと歩を進めた。倒れそうになりながらもテーブルの端で身体を支え、彼女は手探りで父親のほうへと身を進めた。「お父様、このひとにはもう何度も何度もお尋ねになったのでしょう? あとはあたしにお聞きになればいいわ」

ヴドレスは娘の言葉にしばし黙り込んだ。「よかろう、お前は何を見たのだ?」 ティエラは視力を失った目を大きく開き、まっすぐに前を見据えたまま、はかなげに微笑んだ。「月がはっきりと姿を見せていたわ。まるで生きているみたいに、内に秘めたエネルギーがほとばしって……。そして、突然月の中心で何かが弾け、飛び出したの。卵から鳥が孵るみたいに。あたしは目をそらすことができなかった。あまりにも美しすぎて……」

ヴドレスはうつむいた。そしてその視線を再び自分の娘へと戻し、こう尋ねた。「お前は本当にこのヒューマンの男を愛しておるのかね」

「ええ」 ティエラは挑むように答えた。

「ならばその男と共に行くがいい」 ヴドレスは言い、ガードたちにサーヴェンを床に下ろすよう手で合図をした。「ここを出てゆけ。お前に戻る家はない。もはや私に娘などおらぬ」

ティエラは冷静を保ったまま、父の言葉にうなずいた。そしてサーヴェンのもとに身をかがめ、立ち上がろうとする彼に向かってその手を差し伸べた。「さあ、あたしの手をとって。進む道を教えてちょうだい」 ヴドレスは2人が立ち去るのを見守った。そして、ガードにこう命じた。「2人がちゃんと宿を見つけるか見届けてこい。ティエラの荷物をそこに運んでやるのだ。2人に身の危険がないか確かめてくるのだぞ。ただし、今後いっさい私の前で2人のことを口にしてはならぬ」 ガードは一礼すると2人の後を追った。

ヴドレスは情報屋へと向き直った。「知るべき事実はまだ必ずある。それを探すのだ」 情報屋は一礼すると、扉の向こうへと姿を消した。薄暗い部屋にはヴドレスだけが残された。テイル・ダルは娘が必死につたって歩いていたテーブルの端をそっとなでた。そして、強く拳を握り締め、暗闇の先を見つめた。


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