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http://www.playonline.com/eq2/tod/tod_c06.html より

ガクタ陥落編集

「神聖なるマーの御名にかけて……なんという大軍なのだ!」 キルックは城門のアーチの上から、地上で行われている大虐殺に目をやった。彼方まで広がる沼沢をすべて埋め尽くすようにラロシアン帝国の軍勢が押し寄せている。ここ数年、オーガたちによるイノシュール沼への襲撃は頻繁に起きていた。だが、こんな規模での侵攻は、かつてないことだった。

「大軍だからどうした!」 ゴームック隊長は配下の弓兵隊へ一斉射撃を命じた。合図とともにラロシアンの騎兵隊に、矢の雨が降り注いだ。「奴らはしょせん戦士の誇りとは無縁の獣たちだ。どんな大軍だとて、我らが負けるはずはない!」

キルックはかぶりを振った。「戦士の誇りだけでは、どうにもならんことがある。このままでは城壁を突破されてガクタ市街になだれこまれるぞ。奴らに、卵と幼生たちの保育施設が見つかりでもしたら……」

「なにを弱気な!」 ゴームックは自ら激しく矢を射ながら反論した。「敗北などありえない! 必ずやミサニエル・マーが我らを勝利に導いてくださる!」

隊長の言葉には答えず、キルックは敵に向かって呪文の詠唱をした。指を突き出すと、その先にいたオーガたちの上にアイスコメット(Ice Comet)の氷塊が降った。だが、倒れたオーガの穴を埋めるように、その後ろから倍以上の新手が現れる。それは、絶望的な戦いだった。

「地下通路だ、ゴームック。卵と幼生たちを集めて、一般市民たちと一緒に地下通路に向かわせろ。さもないと全滅だぞ」

神の名を唱えながらゴームック隊長はさらに射撃を続けた。それに応じるように、眼下のオーガたちは投石機を引き出してきた。さらにオーガのメイジたちが巨大な火球を召喚し、投石機によってそれが城壁に向かって放たれた。赤々とあがる火の手に、ゴームックはついに敗北の瞬間が迫っていることを悟った。「街を放棄する……? 馬鹿な。この場所を得るために、どれだけ同胞の血が流されたか。それを、放棄するだと。我らに神聖な祝福を与えてくださった御方に顔向けができないではないか!」

キルックはオーガのウィザードたちに稲妻の矢を放ったが、相手の魔力の障壁で攻撃は中和されてしまった。キルックは諭すようにゴームックに言葉をかけた。「ガクタを離れても生きていける。広大な沼は我らの味方だ。もう1度、力をつけて街を奪い返せばいい。ここに最後まで留まることが戦士の誇りだとしたら、そんなものは本当の誇りではないぞ。聞け、ゴームック。地下通路の上層を通れば、市民たちも安全にガックに辿り着ける。ラロシアンの奴らも、入り組んだ地下洞窟にまで攻城兵器を持ち込むことはできん。あそこに籠もって戦えば、もちこたえられるはずだ」

無言でさらにゴームックは矢を射続けたが、その必死の攻撃も、怒濤のように押し寄せる軍勢の前には無力だった。フロッグロックたちの死体が戦場を舗装するように敷き詰められていく。投石機がうなるたびに、跳ね上げられた火球が城壁を炎に包んだ。

ゴームックは城門の上から、地上で防戦に追われるガードたちに叫んだ。「議会に伝えろ。もはや城壁が破壊されるのは時間の問題だと。そしてお前たちが卵と幼生を保護して、地下通路へ運ぶんだ。一般市民たちがすべて地下へ入ったことを確認してから自分が入口を外から埋める!」

ガードたちは敬礼もそこそこに、命令に従って駆け出した。そしてゴームックはかたわらのキルックへ振り向いた。「長老たちから気になる噂を聞いたことがある。ガックの深部で、何か邪悪な力が目覚めつつあると。それがただの噂に過ぎないといいが……。いまは、あの地下の古き砦が我らフロッグロックを守ってくれることを願うばかりだ」

「的確な指示だったよ、ゴームック。あとは、わしとお前の2人で、マーへの誓いにかけて奴らに目にものをみせてやろう。とにかく、皆が脱出するための時間を稼ぐのだ」

「オーガども、まだ戦いはこれからだ!」 ゴームックはまっすぐに敵の軍勢を睨みつけた。「この沼地を、オーガどもの汚れた血であふれさせてやる!」

眼下のラロシアン軍に向けて残る矢をすべて射つくすと、ゴームックは腰の剣を抜きはなった。「地下通路の封印は任せたぞ。キルック」 そう叫ぶと、力強い跳躍でゴームックは城壁を飛び降り、戦場に降り立った。全身を震わせ、フロッグロックの雄叫びをあげる。「マーのためにッ!」 ゴームックはオーガたちの壁に斬りこんだ。剣を縦横に振るい、オーガの兵士たちを薙ぎ倒して突進していく。

「待て、1人でいくなゴームック!」 突進を続けるゴームックになんとか防御呪文をかけようとしてキルックは叫んだ。だがゴームックは構わずに敵のまっただなかに突き進んでいく。すぐにゴームックの姿は、オーガたちの巨体に埋もれて見えなくなった。

「……お前の犠牲を無駄にはせん。ゴームック」 つぶやくとキルックは持てる最大の呪文の詠唱を始めた。そして押し寄せるオーガたちに、ありったけの魔力をそそいだ攻撃を放った。その直後、オーガたちの投石機が城壁の至近にまで寄り、ひときわ巨大な火球を跳ね上げた。キルックは嘆息し、短く祈りの言葉を口にした……。


「……どういうことだ。残りの連中はどこに隠れておる?」

「ハッ。それがまったくもって不明であります、将軍閣下。連中の保育所も、もぬけのからで。市民どもの姿も見当たりません。その……まとめてどこかへ蒸発してしまったとしか思えないであります」

ウルドゥークは戦馬から降り、直立不動のままの部隊長の前に立った。「ほう。連中は蒸発したのか?」 手甲に覆われたウルドゥークの拳が部隊長の口元にめりこんだ。地面にはいつくばった部隊長の意識はどこかへ飛んでいた。

焦土と瓦礫の山だけが広がるその場所には、つい昨日までガクタの街並があったのだ。徹底的な破壊の跡をウルドゥーク将軍は眺め回した。「オレは命じたはずだ。1匹も残さずフロッグロックどもを絶滅させろと。それを、まんまと奴らに逃げられるとは! しかし、奴らはどうやって……いや、どこへ逃げたというのだ?」

1人の屈強な体格をしたオーガが将軍の前に進み出て敬礼をした。「我々の戦列を突破したフロッグロックが1匹もいないことは確かです。ただ、1ついえるのは、どんな手段を用いたにせよ、奴らが逃げ込む場所は、奴らの祖先が故郷としたあのガックの洞窟以外にありえないということであります」

この下士官の意見を聞いてウルドゥークは深くうなずいた。「なるほど。フロッグロックどもが逃げ込むとしたら、あそこしかないか。もっともな考えだ。貴様、名はなんという?」

「ダナーグであります」

「いいだろう。ダナーグ部隊長、貴様の配下の兵士をかき集めてガックへ急行しろ。洞窟に侵攻して、今度こそあのいまいましいフロッグロックどもを皆殺しにしてやれ。この任務を果たすまで、退却は許さん。いいな?」

ダナーグはもう1度、敬礼した。「将軍閣下のご期待に添えるよう力を尽くします」 すぐにダナーグは回れ右をすると、配下の者たちについてくるよう合図をして、その場を離れた。

ウルドゥークは再び戦馬にまたがると、全軍に轟くような声で命じた。「ガック襲撃隊をのぞいて、当初の予定どおり、ここで全軍を2翼に分ける。タロンの印をつけた者たちはイノシュール全土を制圧した後、北上してロー砂漠南部にて同盟軍であるオークたちと合流する。またバロンの印をつけた者たちはオレに従ってフィーロットへ向かう。次はレイス山脈地帯の制圧を目標とする」

参謀の1人が耳打ちするようにウルドゥークに告げた。「閣下。バロン師団はガクタ攻めで予想以上の被害を出しております。兵力の補充が必要でありましょう」

ウルドゥークは軽くうなずいた。「心配ない。カジック・シュールの神殿に入り、そこで“恐怖”の界の眷属どもを、補充戦力として併合するつもりだ。それなりに、役に立つ戦力になってくれるだろう」

「ですが、閣下。アミグダランどもは以前、我らの要請を受けたにもかかわらず、軍に加わることを拒みましたが。いまになって連中が意志を変えるでしょうか?」

「あの者どもの意志など関係ないわ。奴らが従わぬなら、ボロ神殿を叩き壊し、プレイン・オブ・フィアーへの“門”も砕いてやるまで。力弱く沈黙するばかりの神に仕えているのが奴らの不幸ということだ!」

ウルドゥークの合図とともに、バロン師団は西へ向けて進軍を開始した。ウルドゥークは配下の兵士たちが、血と破壊に昂揚していることを知っていた。彼らはじきに、さらなる征服を望むようになるだろう。「アバター・オブ・ウォーは正しかった」 フィーロットへと向かう行軍の中で、ウルドゥークはひとりごちた。「まさしく、この世界は遠からず我らの手に落ちるだろう……」


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